大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和43年(オ)854号 判決 1968年12月12日

上告人

浅沼寛子

ほか二名

代理人

佐藤軍七郎

被上告人

窪田亨

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人佐藤軍七郎の上告理由第一点および第二点について。

原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の適法に確定した事実によれば、訴外浅沼盛信は、同人を代表取締役とする浅沼製菓株式会社が手形取引停止処分を受けたので、おそくとも昭和四一年三月から北海道拓殖銀行亀戸支店に実兄浅沼定雄名義の当座取引口座を設け、同年九月死亡するまで多数回にわたり定雄名義で手形を振り出し、本件約束手形はその一通であり、一方、右定雄はいわゆる失対人夫で経済的な信用や実績のある者ではない、というのである。このような事実関係のもとにおいては、訴外浅沼盛信は、自己を表示する名称として定雄名義を使用したものと認めることができるから、その名義を用いた手形署名は盛信自身の署名とみるべきであり、したがつて、盛信は、本件約束手形の振出人として、その手形金支払の義務を負うものといわなければならない。これと結論を同じくする原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。所論引用の最高裁判例(昭和三九年(オ)第七五七号、同四一年一〇月四日第三小法廷判決、週刊金融判例二九号一四頁、昭和三九年(オ)第八一五号、同四二年六月六日第三小法廷判決、裁判集民事八七号九四一頁)は、本件と事案を異にして適切でなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(大隅健一郎 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例